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FCG インドネシア ニュースレター(No37)0.5%最終税の「選択構造」が逆転した意味

2026年01月29日インドネシア

0.5%最終税の「選択構造」が逆転した意味

新設法人における初年度判断の重要性

 

インドネシアにおける売上総額課税型の最終所得税(税率0.5%)制度は、長年にわたり中小規模事業者の税務簡素化を目的として運用されてきた。一見すると、政府規則第23号(2018年)(PP23/2018)と財務大臣規則第164号(2023年)(PMK164/2023)は、同一の政策目的を共有し、同一税率を維持しているように見える。しかしながら、両制度はその法的構造および制度設計の前提が本質的に異なっており、その差異は企業の中長期的なキャッシュ・フロー計画や欠損金管理に重大な影響を及ぼし得る。

 

PP23/2018:0.5%最終税は「選択制(オプトイン)」

PP23/2018の下では、新設法人において、売上総額に対する0.5%の最終所得税を事業開始時点で適用するか否かが、税制上の重要な判断事項とされていた。

すなわち、新設法人が初年度から通常の法人所得税制度(課税所得ベース)を適用するためには、事業開始段階で明示的な届出(オプトアウト)が必要となる構造である。

この制度設計では、簡素な最終税の適用を希望する納税者が自ら意思表示を行うことが前提とされており、「特段の選択を行わなければ通常課税に戻る」という整理がなされていたといえる。

 

PMK164/2023:制度は「オプトアウト型」へと転換x

これに対し、PMK164/2023は、同じ0.5%という税率を維持しつつも、税制選択の前提を根本から転換している。

新設法人が年間売上総額48億ルピア以下となる見込みで、かつ所定の要件を満たす場合、原則として設立初年度から0.5%最終所得税制度の適用対象となる。

新設法人が初年度から通常の法人所得税制度を適用したい場合には、事業開始時点で書面による届出(オプトアウト)を行う必要がある。

言い換えれば、両制度の関係は以下のとおりである。

● PP23/2018
0.5%最終税を利用したい場合、納税者が自ら選択する」

● PMK164/2023
0.5%最終税を利用したくない場合、納税者が自ら除外を申し出る」

このように、制度の初期設定(デフォルト)が完全に逆転している

 

なぜこの違いが重要なのか

― キャッシュ・フローと欠損金への影響

新設法人では初年度に利益が生じていない場合であっても、0.5%最終所得税の適用による課税が生じ得る。

そのため、特に以下のような企業においては、制度選択が極めて重要となる。

初期投資や固定費負担が大きい新設法人

研究開発費・人件費等の比率が高い企業

立ち上げ期・拡張期にあり、当面の利益創出が見込めない事業体

初年度に0.5%最終税の適用を受けた場合、当該期間における欠損金の計上や将来年度への繰越控除は認められず、初期赤字の税務上の活用機会を失う可能性がある。

一方、通常の法人所得税制度を選択した場合には、税務上の欠損金を将来の課税所得と相殺することが可能である。

新設法人においては、事業開始時に特段の意思表示を行わないこと自体が、初年度から欠損金の活用機会を放棄する選択となり得る点に十分な注意が必要である。

 

企業に求められる実務対応

PMK164/2023は、0.5%最終税の適用を「自動的に開始する」制度ではないものの、新設法人が初年度から通常課税を選択するためには、事業開始段階における明示的な届出が不可欠である。

したがって、売上規模が48億ルピア以下であっても、

収益構造

費用構成

投資回収期間

を総合的に勘案し、どの税制が中長期的に合理的かを早期に判断した上で、必要に応じて適切な届出を行うことが不可欠である。

 

まとめ

PP23/2018とPMK164/2023は、同一税率を用いながらも、税制選択の思想とその帰結において全く異なる制度である。前者は「選択しなければ通常課税」、後者は「選択しなければ最終課税」という構造を採る。現行制度の下では、沈黙は中立ではない。それは、企業のキャッシュ・フローおよび将来の税務ポジションを左右する、明確な選択となり得るのである。

 

 


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