Newsletter of FCG Group.

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Friday December 12th, 2025欧州
フェアコンサルティンググループは、世界20カ国/地域・36のグローバル拠点を、提携ではなくフェアコンサルティングの直営拠点として展開しています。そのうち、欧州各国の情報を本ニュースレターにてお届けします。現地の情報収集目的などにご活用ください。
今月の掲載国は、以下のとおりです。
イギリス
UK予算2025:税制改正と日系企業への影響
<はじめに>
本記事は、2025年予算で発表された税制措置および関連する既報の措置をまとめた文書「Budget 2025 — Overview of tax legislation and rates (OOTLAR)」の主要な改正点を、UKに進出している、または進出を予定している日系企業とその駐在員に関連する観点から抜粋して解説します。
本資料に記載されている措置は、特段の指定がない限りUK全土に適用されます。
<個人所得税>
日系企業のUK駐在員や現地従業員に影響を与える主な改正点は以下の通りです。
所得税率・控除関連
●所得税 Personal Allowance および最高税率閾値の据置/引き上げ: 2028–29税年度から2030–31税年度まで、Personal Allowanceは£12,570、Basic Rate Limitは£37,700に設定され、その結果Higher Rate Thresholdは£50,270となります。
●配当所得税率の引き上げ: 2026年4月6日より、配当所得に適用される所得税率のうち、Ordinary Rateが10.75%、Upper Rateが35.75%に引き上げられ、Additional Rateは39.35%で据え置かれます。
●貯蓄所得税率の引き上げ: 2027年4月6日より、貯蓄所得に適用される税率が変更され、Basic Rateは2%ポイント増の22%に、Higher Rateは2%ポイント増の42%に、Additional Rateは2%ポイント増の47%に引き上げられます。
●不動産所得税率の新規設定: 2027年4月6日より、不動産所得に対する新たな税率(Basic Rate 22%、Higher Rate 42%、Additional Rate 47%)が導入されます。
これらの不動産所得税率は、当初はイングランド、ウェールズ、北アイルランドに適用され、スコットランドおよびウェールズの税率設定権限との関係については、今後の協議が予定されています。
<雇用関連/福利厚生>
●福利厚生免除の拡大: 2026年4月6日より、眼科検査、在宅勤務用設備、およびインフルエンザワクチン接種に係る費用の償還について、所得税および国民保険料(NICs)の免除規定が拡大されます。
●在宅勤務費用の控除廃止: 2026年4月6日より、未償還の在宅勤務費用に対する所得税控除が廃止されます。ただし、雇用主は引き続き、所得税および国民保険料の控除なしで当該費用を従業員に償還することが可能です。
●EMIスキームの要件拡大と通知要件の廃止: Enterprise Management Incentive (EMI) スキームの適格性要件が2026年4月6日以降に付与される契約から拡大されます。具体的には、会社の最大価値が£300万から£600万に、総資産が£3000万から£1億2000万に、従業員数が250人から500人に、行使期間が10年から15年に延長されます。また、EMIオプション付与の通知提出要件は、2026年4月6日以降に付与されたオプションについて廃止されます。
●従業員自動車所有制度(ECOS)の改正: Employee Car Ownership Schemes (ECOS) を通じて提供される車両が課税対象の福利厚生として扱われるよう規則が改正されます。
●PHEV法人車税制の軽減措置: 一時的な措置として、プラグインハイブリッド車(PHEV)について、法人車税の課税対象福利厚生額の算定上、CO2排出量を名目上の低い値として扱う特例が導入されます。この措置は2025年1月1日に遡及して適用され、原則として2028年4月5日まで、対象車両については契約変更・更新または2031年4月5日のいずれか早い時点まで適用されます。
●Overseas Workday ReliefとPAYE通知の整合: Overseas Workday Reliefを請求する従業員に対し、PAYE通知の対象となる所得を、非課税となる所得の最大限度と整合させる立法が導入されます。これは2026年4月6日から適用されます。
●雇用主国民保険料(NICs)Secondary Thresholdの維持: 雇用主が負担するNICsのSecondary Thresholdは2028年4月まで£5,000に維持されます。
●年金拠出に対する給与犠牲(Salary Sacrifice)の継続課税: 年間£2,000を超える年金拠出に対する給与犠牲について、雇用主および従業員のNICs課税を既存の税率で維持する立法が導入されます。
<法人税>
日系企業のUK子会社や支店に影響を与える主な改正点は以下の通りです。
税率・優遇措置
●法人税率の維持: 2027年4月1日から始まる2027年度(financial year)の法人税について、メインレート25%、スモールプロフィットレート19%が維持されます。
●キャピタル・アローアンスの改正: 2026年1月1日以降に発生した支出に対し、40%の新規初年度控除が導入されます。これに伴い、法人税のメインレートの減価償却控除率は、2026年4月1日から14%に引き下げられます。
●ゼロエミッション車への100%初年度控除の延長: ゼロエミッション車および電気自動車充電ポイントに対する100%初年度控除が、法人税については2027年3月31日まで延長されます。
●研究開発(R&D)の海外支出制限の明確化: UK外で発生する研究開発支出に対するR&D支出控除(RDEC)およびR&D税額控除の制限の範囲を明確にする立法が導入されます。この変更は、2024年10月30日以降に行われた請求に適用されます。
国際課税・コンプライアンス
●移転価格、PE、DPTの法改正: UKの国際課税法(移転価格、恒久的施設(PE)、Diverted Profits Tax(DPT))の3要素を簡素化および現代化する立法が導入されます。この変更は、2026年1月1日以降に開始される課税期間に適用されます。
●Pillar 2グローバルミニマム課税の改正: 多国籍企業トップアップ税および国内トップアップ税について、国際的に合意されたガイダンスとの整合性を確保するための技術的な修正が導入されます。
●国際管理取引スケジュール(ICTS): HMRCに多国籍企業グループ内の国際的な管理取引を規制する権限を与える立法が導入されます。この要件は、2027年1月1日以降に始まる会計期間に適用されます。
●法人利子制限(CIR)の報告要件簡素化: Corporate Interest Restriction(CIR)ルールの報告会社に関する立法を簡素化します。
●Advance tax certaintyの導入: 主要なプロジェクトに対する税務の確実性を向上させるための「事前税務確実性サービス」の第一段階が2026年7月に開始されます。
<その他>
日系企業全般に影響する可能性のある税務行政および間接税に関する措置は以下の通りです。
税務行政・コンプライアンス
●法人税遅延申告ペナルティの増額: 法人税の遅延申告ペナルティが増額されます。例えば、申告が遅れた場合のペナルティは£100から£200に引き上げられ、3ヶ月超の遅延は£200から£400に引き上げられます。
●Economic Crime (Anti Money Laundering) Levy (ECL)の改正: 2026年4月1日以降、UK収益が£3,600万以上の企業に適用されるECLのバンドと課徴金が改正されます。
○UK収益£3,600万超£5億以下のバンドBの課徴金は£36,000。
○UK収益£5億超£10億以下のバンドCの課徴金は£500,000。
●HMRCのデータ収集権限拡大: HMRCのデータ収集権限を拡大するための立法が導入されます(金融口座情報、カード販売データなど),。2028年4月から適用されます。
●MTD for Income Taxの設計最終化: Making Tax Digital (MTD) for Income Taxに関する立法が最終化され、2026年4月1日から適用されます。
●租税回避スキームプロモーターへの取り締まり強化: マーケット型租税回避スキームのプロモーターに対する罰則賦課権限の変更、回避スキームの禁止、HMRCの広報権限の変更など、取り締まりを強化する立法が導入されます。
間接税・環境税
●VATグループのクロスボーダー規則の改正: VATグループ内の国境を越えた取引の取り扱いを見直し、VATグループ全体を単一の納税主体として運用されていた以前の立場にUKを戻します。この措置は2025年11月26日から適用されます。
●炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入: 2027年1月1日より、アルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄鋼部門からの輸入品に炭素価格を課す新たな環境税であるCBAMの立法が導入されます。
●プラスチック包装税(PPT)の改正: 2027年4月1日より、化学的にリサイクルされたプラスチックの帰属を可能にするマスバランスアプローチが導入され、30%を超えるリサイクル含有量を有する包装についてPPTの免税が認められます。一方で、同日以降はプレコンシューマープラスチック廃棄物はPPT上のリサイクル原料としては認められません。
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情報源 (Source Document)
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このニュースレター記事は、提供されたソースドキュメントに含まれる情報のみに基づき作成されており、特定の税務アドバイスを提供するものではありません。具体的な適用については専門家にご相談ください。
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