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FCG インドネシア ニュースレター(2025年6月12日)

Thursday June 12th, 2025Indonesia

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親会社のコミサリスは子会社の従業員を兼務できるか

 

企業グループにおける職務重複の構造的検討 ― 本稿は、ある者が親会社においてコミサリス(インドネシア会社法において取締役の業務を監督・助言する役職)として選任されると同時に、子会社において従業員として就労しているという事例を対象とし、かかる職務の兼務が企業構造上及び法的に許容されるか否かについて検討するものである。

 

企業グループ構造の理解

親会社および子会社は、いずれも公証人役場における定款認証を経て設立される株式会社であることが多く、それぞれ独立した法人格を有する。たとえ同一のグループに属していたとしても、両者は法律上明確に区別される法人として取り扱われる。この法人格の分離により、資産およびリスクは各法人間で切り離され、相互の責任が発生することはない。かかる独立性は、グループ企業における経営管理およびリスク回避戦略の根幹をなす。

 

コミサリスの職責

株式会社における機関構成は、株主総会、取締役会、コミサリス等から成り立つ。コミサリスは、取締役の業務執行に対する監督及び助言を担う機関であり、その職責は経営方針の適正性および会社目的の達成に資することを目的とする。コミサリスの選任・解任手続は、通常、定款に基づき株主総会において決議される。かかる職務関係は、労働契約に基づくものではなく、会社法及び内部統治規程に準拠して定義される。

 

子会社における雇用関係

ある者が子会社において従業員として雇用される場合、その法的関係は労働契約により成立する。労働契約の締結に際しては、意思の合致、行為能力、職務内容の明確性、公序良俗及び関係法令の遵守が求められる。労働契約には、労働条件、報酬体系、勤務時間、職務責任等の基本事項が明記されており、当該契約関係は専ら労働法の規律下に属するものであり、会社法上の役員職務とは一線を画す。

 

親会社のコミサリスと子会社の従業員の兼務

コミサリスと従業員の兼務における根本的前提として、親会社および子会社が法的に異なる法人格を有するという点が挙げられる。したがって、一方の法人における役職が、他方の法人に当然に及ぶものではない。コミサリスへの就任は株主総会の決議に基づくものである一方、従業員としての地位は労使間の契約に基づき付与される。ゆえに、企業構造上、兼務は可能であるが、両社の定款もしくは内部規則において当該兼務を禁止する規定が存在しないことが前提条件となる。しかしながら、兼務によって利益相反の懸念が生じ得る点については慎重な配慮が必要である。コミサリスには職務執行の客観性および独立性が求められるところ、子会社の業務執行に関与することで、その職責が損なわれる可能性がある。

 

コーポレート・ガバナンスおよび利益相反の観点

兼務自体を明示的に禁止する法的規定は存在しないものの、企業はガバナンス上の影響を十分に考慮すべきである。コミサリスの監督機能は、他の利害に左右されることなく、中立的に行使されなければならない。子会社の従業員としての業務遂行が、コミサリスとしての監督判断に影響を及ぼす場合、判断の独立性や職務の公正性が疑義を招くこととなる。企業においては、当該兼務が定款、就業規則、または労使協定において許容されるか否かを慎重に確認する必要がある。

 

実務的留意事項

仮に両職務を兼務させる場合、企業としては、親会社および子会社双方の定款、雇用契約、内部規程を精査し、兼務に関する制限条項の有無を確認することが望ましい。明文の禁止が存在しない場合であっても、当該職務兼任が監督機能の実効性に支障を及ぼし得る以上、企業統治の観点から望ましくないと判断される場合も少なくない。

 

結論: 役員と従業員の地位は併存可能か

親会社のコミサリスが子会社の従業員を兼務することは、両法人が独立した法人格を有し、かつ定款、雇用契約、又は社内規程において明示的に禁止されていない限り、法的には許容されるものである。しかしながら、当該兼務がコミサリスの監督職務に対し利益相反を生じさせ、企業統治上のリスクを高める可能性があるため、企業においては社内規程及び統治体制を精査のうえ、慎重に判断を行うことが求められる。

 

 


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【PDF】FCGインドネシアニュースレター_No.8