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FCG インドネシア ニュースレター(2025年4月23日)

2025年04月23日インドネシア

インドネシア印紙税の本質

わずか1万ルピアが契約の効力を左右する

 

インドネシアの規制体系において、印紙税(Bea Meterai)は一見些細な存在に見えるが、法的影響力は極めて大きい。契約書、雇用契約、株主間協定、さらには国際的な取引文書においても、その有無が訴訟リスクや契約効力に直結する。

 

1.印紙税とは何か? 〜税金ではなく、法的トリガー〜

印紙税は所得や売上に課される税金ではない。「金銭の記載がある文書」「法的権利を発生させる文書」「証拠として用いられる文書」などに対して課される国家収入(PNBP)の一種である。税率は一律10,000ルピア(約105円)。取引額にかかわらず、定額である。

⚠️ 未貼付の場合:

✓ 裁判における証拠能力が否認される
✓ 行政罰の対象となる可能性がある

そのため、企業法務においては見落とせない法的要件である。

 

 

2.各国比較:日本・英国・米国の事例

インドネシアだけの話ではない。

日本:印紙税法により、契約金額に応じた変動印紙税を適用。

イギリス:紙媒体の印紙税は廃止されたが、不動産取引(Stamp Duty Land Tax)や証券取引(Stamp Duty Reserve Tax)は依然として課税対象。

米国:連邦レベルでの印紙税は限定的(銃器移転等)である一方、多くの州・地方政府では、不動産譲渡やたばこ製品販売等に対して印紙税(移転税)が課される。

インドネシアの定額制は単純だが、その適用範囲と実効性は非常に強力である。

 

 

3.歴史と改革:植民地時代から電子化へ

印紙税はオランダ統治時代から存在し、インドネシア独立後も継承された。

・旧法:1985年法第13号

・改正:2020年法第10号 → 2021年1月より施行
⇒電子文書にも対応
⇒税率を10,000ルピアに統一
⇒ペーパーレス社会への適応

この改革により、電子取引やe文書への対応力が強化された。

 

 

4.いつ必要か?企業活動における印紙税の発動ポイント

法第10号第3条およびPMK 78/2024により、以下の2つが主な課税対象:

1. 私法上の事実を記載した文書(契約書、債務承認など)

2. 裁判等で証拠として使用される文書

課税対象文書(例)

・契約書、MOU、雇用契約、ベンダー契約
・公証人作成の公正証書(正本、謄本、抄本を含む)
・土地譲渡証明書(PPAT)
・約束手形、為替手形、その他有価証券
・証券・デリバティブ契約
・競売関係書類(売却決定書、記録要旨、調書、正本および謄本等)
・5百万ルピア(やく5万円相当)超の金銭領収書や債務履行確認書
・政府規定で指定されたその他の文書

非課税文書

・船荷証券、配送伝票
・卒業証書など学術文書
・給与明細、年金受給明細
・国庫・地方政府関連の公式領収書
・社内利用の非商用領収書
・銀行預金証、投資明細
・中央銀行銀行インドネシア発行の政策文書

🔎 経営者向け注目点

海外で締結された契約文書も、インドネシア国内で使用する場合はpemeteraian kembali(再課税)が必要となる。これを怠れば、法的効力が否定されるリスクがある。

 

 

5.電子印紙と再課税:新時代のコンプライアンス対応

電子印紙(e-Meterai)

・発行元:Perum Peruri(国営印刷会社)
・特徴:デジタル署名、QRコード、固有識別番号
・対象:PDF契約書、デジタル領収書、オンライン株主総会議事録等

●再課税(Pemeteraian Kembali)

・海外締結の契約書をインドネシア国内で使用する際に必要
・適用先:株主決議、M&A議事録、年次総会議事録
・提出先:公証人、税務署、法務人権省

印紙の遡及貼付(物理または電子)により、国内法上の証拠能力が認められる。

 

 

6.経営層が押さえるべき戦略的観点

たった10,000ルピアの印紙だが、その法的・財務的影響力は計り知れない

1. 契約効力の確保:印紙未貼付契約は、裁判で無効とされる可能性がある。Pemeteraian Kembaliによる是正が必要。

2. クロスボーダー対応:東京やシンガポールで開催された株主総会の議事録も、インドネシア提出時には再課税が必要

3. M&AやIPO時のデューデリジェンス:印紙税の未対応は、買収・上場時の遅延要因や罰則リスクとなり得る。

4. ESG・ガバナンス報告対応:法的に適正な文書運用は、ESGの「G(ガバナンス)」の観点からも、投資家に対する信用力の証左となる。

 

 

7.結語:小さな印紙が示す、大きな法的存在感

デジタル時代において、印紙は時代遅れに見えるかもしれない。しかし現実には、何世紀にもわたる法理に支えられた、強力な法的裏付け手段である。電子印紙(e-Meterai)制度により、インドネシアは紙とデジタルの両面で法的整合性を確保している。

 

 


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フェアコンサルティンググループ

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【PDF】FCGインドネシアニュースレター_20250423