FCGグループのニュースレターをお届けします。

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2025年12月18日インドネシア
トランシップメント貨物における原産地規則(Rules of Origin)遵守
物流・サプライチェーン管理者が把握すべき実務的要点
国際物流において、自由貿易協定(FTA)を活用した関税優遇措置を適切に享受できるか否かは、調達コストや物流費用を左右する重要な経営要素である。しかし、こうした優遇措置は自動的に付与されるものではなく、原産地規則(Rules of Origin:ROO)への厳格な適合を前提としている。特に、第三国を経由するトランシップメント取引においては、ROO遵守の可否が通関結果やコスト構造に直接的な影響を及ぼす点に留意が必要である。
原産地規則(ROO)とは何か
原産地規則とは、貨物の経済的原産性を判定するための一連の基準であり、FTAに基づく特恵関税の適用可否を判断する根拠となる。実務上、ROOは以下の三要素から構成される。
1.原産地基準(生産工程・付加価値の所在)
2.直送要件/非加工要件(Non-Manipulation)
3.手続要件(証明書類および申告手続)
これらのいずれか一つでも欠けた場合、輸出国および輸入国がFTA締約国であっても、特恵関税の適用は認められない。
トランシップメントにおける原産性の考え方
国際物流において、貨物が最終仕向国に到達するまでに第三国を経由することは珍しくない。しかし、「第三国を経由した時点で原産性が失われる」との誤認は依然として多く見受けられる。
実際には、以下の条件がいずれも満たされている限り、原産性は維持される。
・経由国において追加的な生産、加工、又は実質的変更が行われていないこと
・貨物が通関管理下に置かれた状態で連続輸送されていること
この場合、原産国で発給された原産地証明書(Certificate of Origin:COO)は引き続き有効である。
実務判断を左右する証憑書類
トランシップメント取引におけるROO適合性の成否は、実務上、証憑書類の完全性および相互の整合性によって左右される。通関当局が通常確認する主な書類は以下のとおりである。
・正式に発給された原産地証明書(COO)
・連続輸送を立証する船荷証券(Bill of Lading)又は通し船荷証券(Through B/L)
・必要に応じて提出を求められる非加工証明書(Non-Manipulation Certificate)
これらの書類は、貨物が単なる通過にとどまり、経由国で加工されていないことを客観的に証明する内容でなければならない。
原産地判定基準としてのCTCおよびQVC
原産地基準の判断は、各FTAに定められた技術的要件に基づいて行われる。日尼経済連携協定(JIEPA)を含む多くの協定において、実務上中核となる基準は、関税分類変更基準(Change in Tariff Classification:CTC)および付加価値基準(Qualifying Value Content:QVC)である。
CTCは、生産又は加工の結果、最終製品の関税分類(HSコード)が非原産材料と異なる区分へ変更された場合に原産性を認定するものであり、協定上は類(CC)、項(CTH)、号(CTSH)の各単位で規定される。一方、QVCは、最終製品に占める域内付加価値の割合が協定で定められたの基準率以上であることを要件とし、FOB価格を基礎として算定される。
トランシップメント取引においては、経由国での加工が認められないため、CTC又はQVCの充足性は原産国における生産工程のみを基準として判断される点に注意が必要である。
これらの基準は品目ごとに異なるため、日尼間取引においては、必ずJIEPA附属書に定める個別原産地規則を確認した上でCOO発給可否を判断する必要がある。
不適合時に顕在化するリスク
ROO要件を充足しない場合、又は証明書類の真正性が否定された場合、以下のリスクが現実のものとなる。
・FTA特恵関税の不適用
・最恵国税率(MFN税率)の適用による関税負担増
・行政制裁、貨物留置、通関検査の厳格化、最悪の場合は輸入不許可
これらは物流コストの増大のみならず、納期遅延や取引先からの信頼低下を招く重大な経営リスクである。
物流管理者のための実務対応指針
トランシップメント取引におけるリスク低減のため、企業には以下の対応が求められる
・FTAに整合した原産地証明書の正確性確認
・船会社・フォワーダーと連携した輸送書類の一貫性の確保
・経由国における非加工状態の維持管理
・原産地規則コンプライアンスに関する定期的内部監査の実施
結語
原産地規則の遵守は、単なる通関実務の問題にとどまらず、物流戦略およびコスト管理の根幹を成す要素である。トランシップメント取引においては、「経由国での追加加工が存在せず、かつ証憑書類が完備されている限り、原産性は保持される」という原則を正確に理解することが不可欠である。物流部門、貿易管理部門、通関実務が有機的に連携することこそが、FTAの経済的価値を最大限に引き出す鍵となる。
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