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FCG インドネシア ニュースレター(2025年9月17日)

2025年09月17日インドネシア

インドネシアにおける医療機器・理学療法機器の輸入:外国資本企業が留意すべき事項

 

インドネシアのヘルスケアおよびウェルネス市場は急速に拡大しており、外国資本企業(PT PMA)にとって革新的な医療機器や理学療法機器を導入する絶好の機会となっている。一方で、多くの企業経営層は当該分野における輸入規制の複雑さを過小評価しがちであり、十分な理解がないまま進めると、高額な制裁、参入の遅延、さらには流通禁止措置といった重大なリスクを招く危険性がある

 

分類制度の重要性

インドネシアに輸入される医療機器や理学療法機器は、種類・細分類・リスク区分(A、B、C、D)に基づいて厳格に分類される。この分類は単なる形式ではなく、承認ルート、必要な技術的認証、輸入者や販売業者に課される遵守義務を直接左右する。

例えば、

・低リスク(クラスA)の検査キットは比較的簡易な審査で承認される。

・高リスク(クラスCまたはD)の機器、例えばホルモン検査システムや体内使用製品は、流通前に厳格な承認と安全性検証を要する。

したがって、自社製品がいずれの区分に該当するかを把握せずに輸入計画を立案することは許されない。誤分類は承認遅延や行政罰に直結する。

 

標準化名称の使用義務

インドネシアでは、すべての医療機器について標準化された名称の使用が義務付けられている。グローバル市場では商標や製品名を前面に出したブランディングが一般的であるが、インドネシアにおいては登録書類や製品表示において、保健省が定める標準名称が明記されなければならない。例えば、海外市場で「QuickCheck Pro」として販売されている製品であっても、登録時には「アルブミン検査システム(キット・液状)」といった機能名称を用いる必要がある。これは規制当局や医療機関に誤解を与えないための措置であり、遵守しなければ流通承認は得られない。

 

リスク区分が市場投入計画に与える影響

リスク区分は、単なる形式的基準ではなく、市場参入戦略に直結する。

・投資判断:高リスク機器は、臨床データや現地試験等など、より多くの資本投入を要する。

・時間管理:高リスク製品の承認手続きは長期化する可能性が高く、市場投入のタイミングに影響を及ぼす。

・運用計画:病院や診療所は規制当局に認可された製品を優先する傾向があるため、新規性の高い機器は追加的な障害に直面する可能性がある。

 

輸入計画策定前に確認すべき事項

PT PMA企業が輸入計画に着手する前に、以下の点を確認・実施する必要がある。

1.製品分類の確定 – 各製品がどの種類・細分類・リスク区分に属するかを明確にする。

2.名称適合の確認 – 商標名ではなく、保健省が定める標準化名称と一致させる。

3.リスク区分に基づく要件の評価 – 必要な書類、検証、承認要件をリスク区分ごとに見積もる。

4.専門家の早期関与 – 通関、表示義務、医療機関での採用基準等を事前に検討する。

5.関税当局(DJBC)との整合確認 – 保健当局から分類確認を得た後、必ずインドネシア関税総局(DJBC)に提示し、輸入手続きとの整合性を確認する。これにより、重複申請や誤分類による輸入制限を防ぐことができる。あわせて、正確なHSコードを適用し、関税(Bea Masuk、輸入所得税(PPh22)および付加価値税(VAT)を適正に算定することが求められる。

さらに、当該分類および名称の正確性は単に輸入許可の取得にとどまらず、インドネシア国内の医療施設で受け入れられるための前提条件ともなる。

 

違反時のリスク

インドネシアでは未登録医療機器の流通や不適切な表示に対して厳格な制裁が科される。経済的制裁に加え、販売権の停止、医療機関からの信頼喪失、さらには長期的な市場参入障害に繋がる可能性がある。外国資本会社にとっては、地域全体での評判毀損にも波及しかねない。

 

結論:戦略的コンプライアンスこそ市場参入の要諦

外国資本企業にとって、医療機器や理学療法機器の輸入は単なる物流業務ではなく、緻密な規制対応を要する戦略的課題である。製品の正確な分類・名称の適合・リスク評価に加え、通関当局との整合確認を徹底することで、投資を保護し、インドネシア市場における信頼性を確立することができる。もっとも、社内対応だけでは限界があるため、専門的知見を有する弁護士や規制コンサルタントの関与を早期に検討すべきである。適切な助言を得ることが、円滑な市場参入と、輸入禁止・制裁金・流通停止といった重大リスクの回避を分ける分水嶺となる。

 

 


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【PDF】FCGインドネシアニュースレター_No.20