Newsletter of FCG Group.
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Wednesday May 28th, 2025Indonesia
インドネシアのCSR支出は経費になる、制度要件と実務対応を解説
インドネシアにおいて、CSR(企業の社会的責任)は単なる社会貢献にとどまらず、法人税制度に組み込まれた実効的な税務戦略である。一定の要件を満たすCSR支出は課税所得算出時に損金算入が認められ、財務効率と企業信用の双方を高める手段となり得る。本制度では、特定の社会的支出が総収入から控除可能とされ、対象範囲や限度額、証憑管理に関して厳格な規定が設けられている。
▪損金算入の対象となるCSR活動の範囲
損金算入が認められるCSR活動は、下記の5区分に限定されている。いずれも、一定の法的基準を充足し、認可された機関を通じて実施されることが要件となる。
1.国家的災害支援寄附:中央政府により「国家災害」として公式に認定された災害に対する支援に限られ、かつ政府指定の防災機関または正規の認可を受けた募金機関を通じて拠出される必要がある。
2.研究開発(R&D)支援:インドネシア国内で実施される科学・技術・芸術・文化に関する研究活動に対する支出が対象であり、認可された研究機関や高等教育機関への拠出が必要である。
3.教育施設の寄贈:基礎教育・中等教育・高等教育機関に対するインフラや教材の提供が含まれ、スポーツや芸術文化分野の教育機関も対象に含まれる。
4.競技スポーツ育成支援:競技スポーツの振興を目的とする団体への支出であり、体系的かつ持続的なアスリート育成プログラムを担う機関に限定される。
5.社会インフラ整備費用:礼拝施設、文化センター、診療所など、営利目的ではなく公益性を有する施設の建設に要する実際に要した費用が対象となる。
▪支出の形態と評価方法
上記1〜4の区分については、金銭による寄附または物品の提供が認められている。一方で、社会インフラ整備に係る支出については、施設建設という物的提供に限られ、金銭拠出のみでは対象とならない。
寄附物品の評価は以下の通りである:
・減価償却前の資産:取得原価(取得価額)により評価。
・減価償却済の資産:帳簿価額(帳簿上の簿価)に基づく。
・自社製品の提供:製造原価(原価計算基準に基づく実際原価)を用いる。
・社会インフラ建設:実際に支出された建設費用の金額を基準とする。
▪損金算入の要件と限度
損金算入を行うためには、以下の条件をすべて満たす必要がある:
・前年度における課税所得金額が黒字であること。
・寄附の支出により当年度の所得が欠損状態とならないこと。
・すべての支出に対して正当な証憑書類(領収書・契約書等)が備えられていること。
・寄附の受領者は納税者番号を有していること(法令により課税対象外とされる団体を除く)。
また、損金算入できるCSR支出の額には上限が設けられており、前年度の課税所得金額の5%を超える部分については控除不可とされている。さらに、当該支出が特殊関係者(関連会社、親子会社、共同支配会社等)に対して行われたものである場合、損金算入の対象外となる。
▪記録および報告義務
企業は、拠出したすべてのCSR支出について、その用途ごとに帳簿に明確に記載し、証憑書類を適切に管理する義務を負う。
寄附を受領する機関側にも報告義務が課せられている:
・災害支援に関する寄附:四半期ごとに収受および配分状況を報告。
・その他(研究・教育・スポーツ・インフラ):年度末までに年間報告書を提出。
・納税者番号を有する受領団体は、当該寄附を財務報告書に反映し、法人税申告書に添付することが求められる。
これらの要件に違反した場合、支出が損金算入として認められない可能性がある。
▪結論
インドネシアにおけるCSR支出は、明確な要件と法的枠組みに基づき、戦略的かつ実務的に位置づけられている。本制度を適切に運用すれば、公益貢献と税務効率の両立が可能となる。企業としては、認可を受けた機関を通じて寄附を実施し、5%の損金算入限度額を念頭に予算を編成するとともに、帳簿管理・証憑保管・報告義務の履行を徹底する必要がある。これにより、法令遵守を確保しつつ、社会的責任と財務的成果の双方を実現することができる。
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