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FCG アメリカ ニュースレター 第21回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第5回

2020年12月18日アメリカ

21回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第5

人事評価 – Performance Appraisal

 

年度末が近づき、カレンダーイヤーで運営している多くの企業にとっては年次人事評価(Annual Performance appraisal)の時期となりました。評価を行うマネージャーと評価される従業員の双方にとって一年の最終的な人事評価である年次人事評価には、苦手意識を持っている方も少なくないかと思います。 TriNet and Wakefield Research2015年に行った調査によれば、なんと22%もの従業員が不安や緊張のために年次人事評価の面談の日に病欠したことがあると回答しています。しかし効果的に行えば、人事評価はマネージャーと従業員の有効なコミュニケーションチャンネルとなり、双方にとって有益なものとなり得ます。今回のニュースレターでは、人事評価についてお伝えします。

 

人事評価の目的

従来の人事評価は、主にその年のゴールに対しての従業員の成績を評価し、賞与や来期の処遇の決定のために行われてきました。しかし実行するための手間や時間がかかる割に、評価結果が実際の成績をあまり反映できていないという調査結果もあり、形式的、慣習的に続いている面もありました。ここ数年のトレンドとしては、年に一度だけ正式な評価の場を持つだけでなく、日常的に頻繁なフィードバックを行い、年次人事評価はその集成として書面で正式に行うことを選択する企業が増えています。人事評価は、面談を通して企業の今後の戦略を共有し、従業員の長所を評価してモチベーションを上げ、今後の成長のために足りないスキルや知識を伝え、達成に向けてどのようなサポートをしていくか決めるという重要な目的もあるためです。

 

事前準備

まずは人事評価の頻度、フォーム及び方法を決定します。

⑴ 人事評価の頻度

人事評価の頻度は四半期もしくは年次が一般的ですが、一般社員は年次で行い、幹部社員は四半期毎に評価を行うなど、職位やタイトルによって頻度を変えている企業も見られます。なお同じ職位の社員に対して異なる頻度で人事評価を行うことは、差別と受け取られることがありますので注意が必要です。

 

⑵ 人事評価フォーム

人事評価フォームは企業によって大きく異なりますが、一般的には評価項目ごとの5段階評価などのレーティングシステム、フィードバックコメント、来期の目標設定、双方のAcknowledgement(確認)の署名が含まれます。来期の目標設定と共有は、人事評価の重要なポイントの一つです。非現実的なゴールや漠然としたゴールは、達成が困難なだけではなく、従業員のモチベーションを下げてしまう可能性があります。効果的な目標設定にはSMARTゴールが役立ちます。SMARTゴールの名前は、以下の5つの要素の頭文字からできています。

S – Specific (具体的): 何を達成したいのか、何を行うのかなど、なるべく具体的に表現します。

M – Measurable (測定可能): 達成したかどうか測定できるよう、数値を明確にします。

A – Attainable (達成可能): 理想的すぎたり、スキルセットからかけ離れた目標は避け、達成可能な範囲にします。

R – Relevant (関連性): 企業の戦略や部署の目標など、より大きな目的に関連性がある目標にします。

T – Time-bound (期限): 近日中など曖昧な表現は避け、いつまでに行うのか期限を設けます。

「チームの作業効率を改善する」などは曖昧な目標設定の例で、「チームの作業効率を改善するため、第一四半期末までにチームメンバー全員に対してソフトウェアトレーニングを完了する」のように、SMARTゴールを設定する必要があります。

 

⑶ 人事評価方法

人事評価方法は、360-degree feedbackSelf-reviewなどを組み合わせることも有用です。

・360-degree feedback: 面談は一対一で行いますが、評価は上司だけでなく、同僚や部下、仕事でかかわりがある他部署の社員など、様々な立場から評価を集めてマネージャーの決断の参考にします。多方面から評価することでより客観的に評価できます。

・Self-review: 評価される従業員に評価シートを事前に渡して、面談までに自己評価をしてもらいます。従業員は自己評価することで評価期間に起きたことを振り返り準備できるため、より内容のある面談が期待できます。面談ではマネージャーの評価と従業員の自己評価を比べながら、フィードバックを行います。

 

人事評価の頻度、フォーム及び方法が決まったら、人事部から必要に応じて評価者にトレーニングを行い、社員にはどのように評価が行われるか明確に説明します。面談実施の際にはセンシティブな話にもなり得ますので、面談を行う場所は会議室など、静かでプライバシーが守られる個室を利用します。

 

評価の実施の際に陥りやすいエラーの例

・Halo / Horn effect: Halo effect(後光効果)とは、評価する対象のポジティブで目立つ特徴に引っ張られて、その他の特徴も好意的に評価してしまう現象です。Horn() effectは逆にネガティブで目立つ特徴のため、他に優秀な性質があっても否定的に評価してしまう偏見を指します。

・Recency effect (新近効果): 評価する際に、最近起きた出来事や結果に注目が向いてしまい、評価期間全体を顧みずに評価してしまうエラーです。例えば、従業員が人事評価直前に大きなミスを犯してしまった場合、それまで問題なく勤務していても評価期間全体の評価に悪影響が出てしまう可能性があります。

・Centrality / Leniency bias: 実際の働きぶりに関わらず、大部分が評価スケールの中央値になってしまう事をCentrality bias、評価の大部分が平均以上になってしまう現象をLeniency biasと言います。実際にそうであれば問題ないのですが、マネージャーが従業員との衝突を避けるためにこのような評価をした場合、人事評価の目的が達成されず、形だけの面談となってしまいます。

 

評価をする側も評価される側も、改善を促すコメントは居心地が悪いものですが、誠実かつ建設的に行う必要があります。また日常的にフィードバックを行っておくことで、年次人事評価の結果が従業員にとって予期せぬ悪いサプライズとなることも防げます。もしパフォーマンスに問題がある従業員に対して、正しくフィードバックを行わずにずっと当たり障りのない評価を下していた場合、実際に解雇しなければいけなくなった際にWrongful Discharge (不正解雇)に発展する可能性もありますので注意が必要です。

前述した TriNet and Wakefield Researchの調査によると、62%の従業員が人事評価の結果に“不意打ちを受けた”と感じたそうです。評価期間中に改善を促す必要があった場合は、すぐにフィードバックすることで、人事評価までに従業員が改善のために努力する期間を与えることができます。面談の日程と概要は事前に伝え、従業員に準備する時間を与えましょう。

また改善点は業務に関連があることに限定し、人格や私生活など評価に関連が無いことには触れないようにすべきです。もし話し合いが難しくなることが予想される場合は、事前に人事部に相談してどのようにアプローチするか相談することも有効です。

 

人事評価制度の運用は手間も労力もかかりますが、有効に活用すれば企業と従業員の双方にとって非常に有益なコミュニケーションツールとなります。毎年人事評価を行っているにも関わらず目に見える成果がでていない場合は、現在の人事評価プログラムが会社にとって最適であるか見直してみる良い機会かもしれません。

 

 

By 秋保 絵美子

Fair Consulting USA Inc.

Los Angeles Office

 

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Tel: +1-310-792-7059

◇涌井 正晴

Email: ma.wakui@faircongrp.com

 


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【PDF版】FCUS News letter vol.21 Performance Appraisal