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FCGグループのニュースレターをお届けします。

FCCニュースレター Vol.45(2013年6月)

2013年06月01日日本

国際問題化する課税回避行動

 

今月18日、主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)は、首脳宣言を採択して閉幕しました。首脳宣言には、多国籍企業の 課税回避防止策として、企業や個人の資金の流れを把握するため、金融機関が保有する口座情報を他国の税務当局 と自動的に共有する枠組みの構築が盛り込まれるなど、グローバル化する経済を隠れ蓑に租税回避行為に走る多国 籍企業と経済の低迷により緊縮財政を迫られる先進各国との間での税を巡る攻防が熱を帯びてきました。 実際、グローバルに活動する巨大企業の納税額の少なさには驚きます。米飲料大手コカ・コーラのベトナム現地法 人は設立から約20年もの間、法人税を一度も支払っていません。生産効率が悪く利益体質となっていないというのがそ の理由とされていますが、SNSサイトを通じて「課税逃れの」のレッテルが貼られ、同社製品の不買運動にまで発展しま した。こうした世論は企業への圧力となっています。米コーヒーチェーン大手スターバックスは最近、英政府に500万ポン ド(約7億5000万円)の法人税を自発的に支払ったことを公表しました。英国事業は赤字で法人税を納める義務はないも のの、行き過ぎた節税行動に対する消費者の批判をかわすことが、その背景にあります。同社はコーヒー豆をスイスの 子会社を経由して購入することや商標権使用料をオランダの欧州本社に支払うことで利益を英国国外に移転していると の批判が高まっていました。今回のG8で租税回避行動がテーマになったのも、スターバックス社の事例が契機となった とも言われています。 米国でも、租税回避に精を出す企業への風当たりは強まっています。米議会上院はアップルのティム・クック最高経 営責任者を招致し、与野党大物議員が、海外で稼いだ利益を法人税率が高い米本国に戻さず、低税率の海外拠点に 据え置く節税対策をただしたところです。アップル社にとどまらず、グーグル、アマゾンなど米国のグローバル企業は低 い税率の国に利益を移して節税しているといわれています。アップル社は米国での納税を避けて、実質的な法人税率が 2%のアイルランドの子会社に多額の利益を移していると言われていますし、グーグルの実効税率(税引き前の利益に 対する法人税の負担割合を示す税負担率)は実に19%です。 そこで主要各国は、グローバル企業が各国間の税制の差を利用して過度な節税対策を講じるのを防ぐため連携を 強化することで合意し、冒頭の首脳宣言が行われたたというわけです。G8による「税逃れ防止宣言」を受け、経済協力 開発機(OECD)は、7月にその対応策となる行動計画を公表する予定です。同条約への参加を各国に呼びかけるととも に、内容の拡充も検討し、実効性を高める方針も盛り込まれる見通しとなっています。行動計画では特許や商標のよう な知的財産権を海外子会社などに移転する際のルールや、国境を越える電子商取引への課税方法など主な論点を提 示し、一定の期限までに対策をまとめるとされています。例えば、特許などは取得して時間がたってから価値が上がる 場合もあるので、移転のタイミングに応じた共通ルールを定めることや、特許やブランドなど無形資産の適正な価格算 定方法などで共通基準を作ることも検討されています。 さらに、OECDは企業や個人の口座情報の交換ルールを作り、相手国の要請がなくても税務当局間で情報をやりとり する「自動的情報交換」への取り組みを進める方針です。これにより、外国人や外国企業の口座情報など、海外での脱 税を防ぐために税務当局が必要な情報を関係国が共有できるようになります。 このような状況の下、日本政府は、今月の国会承認を経て、企業などの課税逃れ防止を目的とする税務行政執行共 助条約の受諾書をOECDに提出しています。多国籍企業の課税逃れが世界的な問題になるなか、日本も同条約に加わ ることで、税徴収や情報交換などで加盟国間の協力を深め、脱税や過度の節税への対策を強化する狙いです。G8でも 安倍首相が「各国が税負担軽減競争を避けて、税制の調和を図ることが必要だ」と指摘し、自国への外資系企業の誘 致や知的財産権の誘導などに的を絞った優遇税制は避けるべきとの見解を示した後だけに、迅速な対応と言えます。 条約に加盟すれば、日本の税務当局が加盟国に税の取り立てを依頼できるようになるほか、当局間の情報交換も 密になり、監視体制が強まります。これまで日本は2国間での租税条約を進めてきましたが、多国間の枠組みに参加す ることで、国際的な脱税や租税回避行為への対応に幅が広がることになります。