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2020年07月01日ベトナム
「ローンにかかる支払利息の損金不算入」
我が社ではベトナム子会社は日本本社とローンを組んで借入を行っています。ローン契約に基づいてベトナム子会社は日本本社に利息を支払っています。当該利息はベトナムの法人所得税法上、全額損金費用として認められますか。
ベトナム子会社の資金調達方法には大きく分けて以下の3種類があります。
1.資本金として親会社から送金
2.関連会社(親会社を含む)から借入
3.第3者機関(銀行を含む)から借入
上記2と3に対して、損金算入制限規定が設けられています。
2017年5月1日から有効となった政令20号(Decree 20/2017/ND-CP)第8条第3項において、関連者取引に適用される損金算入制限規定として利払前・減価償却前・税金控除前利益 (EBITDA)の20%を超える利息費用については法人所得税を算出する際に損金算入が認められないと規定されました。
2020年6月24日に改正規定 政令68号(Decree 68/2020/ND-CP)が発行され、上述の規定に対して、EBITDAに対する料率等について改正されました。改正内容は以下のとおりです。
1)料率の変更
EBITDAの30%を超える利息費用については法人所得税を算出する際に損金算入が認められないと改正されました。
2)繰越規定
損金算入できなかった利息費用は将来、対象利息費用が発生した年度から最高5年間、繰越してEBITDAの30%以下の利息費用が発生する年度に、追加損金算入が可能になりました。
3)損金算入制限対象外ローン
下記ローンについては損金算入制限対象外となります。
a. Official development assistance (“ODA”) 関連ローン
b. 政府発行の優先融資(Preferential loans made by the government)
c. 国家プログラムもしくは社会的利益実行目的のローン(Loans made for implementing national programs and state social benefit policies)
4)過年度への適用
2017年度、2018年度、2019年度について損金算入制限が適用されていた場合は、新規定の料率で再計算を行い、2021年1月1日までに修正申告を行うことが出来ます。その結果、過年度に法人所得税が過払となった場合には、2020年度の法人所得税確定申告時に申告額から控除可能となります。調整後、さらに損金算入が出来ない残高が発生する場合は2020年度から最高5年間繰延が可能となります。
例1 :EBITDAがプラスの場合
(A)支払利息 70
(B)EBITDA 200
支払利息50(A)のうち、EBITDA(B)の30%(200 × 30% = 60)を超えた10 (= 70 – 60)に対して損金算入が認められません。ただし、最高5年間、繰越してEBITDAの30%以下の利息費用が発生する年度に、追加損金算入が可能です。
例2 :EBITDAがマイナスの場合
■2020年度
(C)支払利息 50
(D)EBITDA △10
EBITDA(D)がマイナスの為、損金算入が認められる金額枠がありません。この場合、支払利息(C)の全額に対して損金算入が認められません。
■2021年度
(E)支払利息 50
(F)EBITDA 300
支払利息50(E)のうち、EBITDA(B)の30%(300 × 30% = 90)が損金算入限度額になります。過年度からの繰越10 + 当該年度の支払利息50の合計60を損金算入することが出来ます。
ベトナムに進出している企業の中には、法人設立後、利益を出せるようになるまでに年数がかかる事例が多く存在します。資金調達手段として、親子ローン等の借入に対して当該損金算入制限規定が適用された場合には法人所得税コストが増えることになります。今回の改正内容を正しく適用することに留意が必要です。
ベトナム子会社の資金調達方法を検討される際には税務リスクについても併せて考える必要があります。必要に応じて、専門家の意見を仰ぐことをお勧めします。
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