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FCG インドネシア ニュースレター(No39)インドネシア税関の新・リスクベース監査

2026年02月13日インドネシア

監査対応は万全でも、DNOA対応は万全か

インドネシア税関の新・リスクベース監査枠組みが、経営者に即時の理解を求める理由

 

これまで、インドネシアにおける関税監査は、苦情、異常値、あるいは個別の執行方針を契機として実施される、比較的事後的な措置として認識されてきた。しかし、その時代は既に終わりを迎えている。SE-17/BC/2025の発出により、インドネシア税関総局(DJBC)は、監査対象の選定方法そのものを構造的かつ恒常的に変更した。これは一過性の運用変更ではなく、データと分析を基軸とする新たな統治モデルへの移行を意味する。輸出入業務を統括する経営者にとって、本通達を軽視することは、もはや中立的な判断ではなく、経営上の重大な死角となり得る。

 

「誰が監査されるか」から「誰が最初に分析されるか」へ

SE-17/BC/2025は、監査の実施方法を定めた規程ではない。
本通達の本質は、「誰を監査対象として検討するのか」を決定する仕組みにある。

同通達の下では、税関当局が直ちに監査に着手することはない。まず、企業または品目を対象としたリスク分析プロセスが実施され、その結果として分析対象候補が正式に抽出される。この候補リストが、Daftar Nominasi Objek Analisis(DNOA)である。

一度DNOAに掲載された時点で、当該企業は分析システム上、もはや不可視の存在ではなくなる。

 

DNOAとは何か ― 監査前段階における静かな関門

DNOAは、警告書ではない。
違反認定でもない。
しかし、無害な一覧表でもない。

DNOAとは、DJBCが分析資源を投入する価値があると判断した企業または品目を、会議体の承認を経て正式に選定した名簿である。DNOAに掲載された対象のみが、次の措置に進む可能性を持つ。

● 関税監査

● 再調査(Penelitian Ulang)

● その他の目的別分析・対応措置

すなわち、

DNOAに掲載されなければ監査は行われない。
しかし、DNOAに掲載された時点で、体系的な精査が既に始まっている。

この選定プロセスは必須であり、文書化され、内部の品質保証を経て実施されるため、恣意性は排除されている。

 

企業がDNOAに掲載される理由

―「法令遵守」だけでは十分ではない

SE-17/BC/2025は、DNOA選定に用いられる主要な変数を明示している。具体的には次の通りである。

● 輸出入取引の継続性(活動実態)

● 輸出入金額

● 関税上の優遇措置・免税・猶予制度の利用状況

● 過去の監査履歴

● 通関書類の件数

● 過去の処分結果の拡張対象となる可能性

これらはいずれも、違反を意味するものではない。

しかし取引規模、制度利用度、及び監査効率性を測定する指標として機能する。その結果、次の事実が浮かび上がる。

取引量が多く、制度を活用し、事業活動が安定している企業ほど、構造的にDNOAの対象となりやすい。

問題は、DNOAに入るか否かではない。
「DNOAに入った際、どのようなデータ像を示しているか」である。

 

なぜ本通達は経営者が把握すべき事項なのか

SE-17/BC/2025は、関税リスクにおける「データ」の位置づけを根本から変えている。

DJBCの分析では、以下の情報が横断的に活用される。

● 輸出入申告データ

● 関税・内国税上の制度利用情報

● 違反および処分履歴

● 納税者番号(NPWP)関連情報

● 税務データや中央銀行データ等の外部情報

すなわち、データの整合性、記録管理、社内統制の一貫性が、監査開始前から企業のリスク像を形成する。

データ管理の不備は、単なる指摘事項に留まらない。
分析範囲の拡大、期間の延長、監査の深度化を招く要因となり得る。

 

経営者にとっての戦略的示唆

SE-17/BC/2025が示すのは、取締りの強化ではない。
取締りの高度化である。

経営者にとっての要点は明確である。

● 監査は突発的な事象ではなく、計画された結果である

● リスク評価は、接触前にすでに完了している

● 実質的な対応局面は、監査開始後ではなく、分析段階以前に存在する

本通達を早期に理解する企業は、監査範囲の限定、是正指摘の抑制、業務の予見可能性の確保が可能となる。一方、理解が遅れた企業は、既に可視化されていた不整合について、後追いで説明を求められることになる。

 

まとめ

SE-17/BC/2025は、現場担当者向けの技術的通達ではない。
それは、国家がどのようにリスクを認識し、配分するかを示す制度設計の表明である。

輸出入を所掌する経営者にとって、本通達は「通知を受けてから読む文書」ではない。
今、理解すべき経営情報である。

なぜなら、新たな制度下において、監査は通知書の到達とともに始まるのではなく、
企業データが分析パイプラインに投入された瞬間に、既に始まっているからである。

 

 

【PDF】FCIDニュースレターNo.39_インドネシア税関の新・リスクベース監査