News/Newsletter

FCGグループのニュースレターをお届けします。

FCG インドネシア ニュースレター(2025年8月20日)

2025年08月20日インドネシア

監査役会の役割と取締役会支援の限界

 

インドネシアの会社法制においては、二層型取締役会制度(two-tier board system)が採用されている。この制度は、経営執行機関たる取締役会と監督・助言機関たる監査役会(Board of Commissioners)を明確に峻別する点に特徴がある。アングロ・アメリカ型の一層型取締役会制度(one-tier board system)のように、経営執行取締役と非執行取締役が同一機関に併存する形態とは対照的である。

 

基本的権限の分掌

・取締役会:会社の業務執行全般に関する包括的権限を有し、法人の代表権を行使しつつ日常的な経営判断を行う。

・監査役会:専ら取締役会の経営執行を監督し、必要に応じて助言を行う。監査役会の使命は、株主利益を保護し、会社経営が適正かつ持続的に運営されることを担保する点にある。

かかる権限分離は、利益相反の回避およびコーポレート・ガバナンスの信頼性確保を目的とするものである。

 

監査役会が関与し得る局面

もっとも、監査役会は管理機関ではないものの、一定の限定された状況下において経営執行に関与することが許容されている。主な局面は以下の三類型である。

1.特定行為に関する承認・補助

定款において取締役会の特定の行為に関し、監査役会の事前承認または補助を要する旨が規定される場合がある。例として、大規模な借入契約の締結など、一定金額を超過する取引行為には監査役会の同意を経ることが求められることがある。ただし、承認権限が付与されても、それは監督機能の一環と解され、監査役会が経営執行主体となるわけではない。

2.取締役不在時の暫定的経営執行

取締役全員が解任・辞任・利害相反等によりその職務を執行できない場合、監査役会は暫定的に取締役と同一の権限・義務を行使し得る。この措置は例外的かつ一時的であり、恒常的な業務執行権限の移転を意味するものではない。

3.法人格未取得段階

設立初期において会社が未だ法人格を有しない場合、定款上の規律に基づき、取締役・発起人・監査役会が共同して法律行為を行う必要がある。法人格取得後は、これらの責任は会社自体に移転する。さらに、取締役会が株主総会(RUPS)の招集義務を履行しない場合には、監査役会が自ら株主総会を招集できると定められている。

 

経営層への示唆

・権限分掌の堅持:監査役会の「支援」はあくまで手続的補助にすぎず、経営執行権は終始取締役会に帰属する。

・定款の重要性:承認・補助の要否は定款に依存するため、CEOやCFOは定款の条項設計・改訂において細心の注意を払うべきである。

・リスク対応策:取締役会不在時の暫定権限行使は事業継続性を確保するための非常手段にとどまる。

・ガバナンス規律の維持:権限の明確な線引きは、監査や訴訟対応、組織再編局面における責任所在の明確化につながる。

 

結語

インドネシアのコーポレート・ガバナンスは、取締役会=経営執行、監査役会=監督という二元的原則を堅持している。監査役会が一定場面で経営執行に関与することは認められるものの、それは限定的かつ補完的措置に過ぎない。企業経営者にとって肝要なのは、定款を通じた権限設計を精緻に行い、柔軟性と監督機能の均衡を確保することである。

 

 


<お問い合わせ先>

フェアコンサルティンググループ

〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2丁目5番25号ハービス大阪 オフィスタワー12F(本社)

WEB:https://www.faircongrp.com/

Tel:06-6451-9201 | Fax:06-6451-9203

e-mai: grm@faircongrp.com

PT FAIR CONSULTING INDONESIA

16th Floor MidPlaza 1 Jl. Jend Sudirman Kav 10-11 Jakarta 10220 Indonesia(インドネシアオフィス)

Tel:+62-21-570-6215 | Fax:+62-21-570-6217

Pahala Alex Lumbantoruan (Chartered Accountant)

e-mail:alexandra@faircongrp.com


「フェアコンサルティング インドネシア ニュースレター」本文の内容の無断での転載、再配信、掲示板の掲載等はお断りいたします。
「フェアコンサルティング インドネシア ニュースレター」で提供している情報は、ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。
フェアコンサルティンググループでは、できる限り正確な情報の提供を心掛けておりますが、「フェアコンサルティング インドネシアニュースレター」で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、フェアコンサルティンググループ及び執筆者は一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

 

 

【PDF】FCGインドネシアニュースレター_No.16