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2025年07月09日インドネシア
インドネシア所得税ロイヤルティ課税の実務と争点
ロイヤルティ支払いは、インドネシアのクロスボーダー取引において、所得税課税上きわめて重要かつしばしば争点となる項目である。とりわけ、非居住者への支払いに対する所得税法(PPh)第26条に基づく源泉徴収義務を伴うため、その分類は重大な税務リスクを内包する。本稿では、インドネシア所得税法上のロイヤルティの法的定義を整理し、代表的な係争事例を通じて実務上の課題を明確化した上で、税務対応上のポイントを提示する。
インドネシア所得税法におけるロイヤルティの定義
インドネシア所得税法において、ロイヤルティとは、いかなる方法によって計算されるかを問わず、 以下の対価として支払われ又は支払うべき金額をいうと規定されている。
・著作権、特許、意匠、商標その他の知的財産権または工業所有権の使用又は使用権。
・産業用、商業用、又は科学用の装置の使用又は使用権。
・科学的、技術的、産業的、又は商業的分野における知識又は情報の提供。
・上記の使用に関連する補助的支援、放送権・伝送権を含む。
・映画フィルム、テレビ用ビデオテープ、ラジオ用オーディオテープの使用。
・これらの権利の全部又は一部の譲渡。
要するに、無形資産の利用に伴う多様な対価が幅広く源泉徴収義務の対象となることを意図している。
実務上の含意
この包括的定義により、クロスボーダーの役務提供料やライセンス料は、実態によってはロイヤルティとして再分類されるリスクを含む。契約上の名称や支払い方式にかかわらず、実質的内容に基づき課税上の判断がなされることが特徴である。解釈の相違は、税務調査、課税更正、訴訟を誘発し得る。以下に、代表的な二つの係争事例を通じて具体的課題を検討する。
係争事例の概要
ロイヤルティと分類されたプロモーション・技術サービス料
あるホテル運営会社は、海外の企業に対し、売上高の一定割合を基準に計算されたプロモーションおよび技術サービス料を支払っていた。税務当局はこれをPPh第26条上のロイヤルティに該当するとし、ブランド使用、ノウハウ提供に対する対価と主張した。これに対し納税者は、支払いは業界標準に基づく実質的な役務提供に対するものであり、知的財産権のライセンス供与を含むものではないと反論した。
裁判所の判断
・税務裁判所:納税者の主張を全面的に認容し、ロイヤルティへの分類を否定。
・司法審査(PK審):税務当局の上告を棄却し、支払いの実質がマーケティング・技術サービス料であるとの認定を支持。
重要な示唆
売上連動型の支払いスキーム自体が、直ちにロイヤルティ性を立証するものではない。納税者は、契約書および取引実態を明確にし、役務提供の実質を立証する責任を負う。
マネジメントフィーおよびロイヤルティ支払いに関する係争
ある製造業(FMCG企業)は、以下の二種類のクロスボーダー支払いを損金算入費用として申告した。
・タイ所在の関連会社へのマネジメントフィー。
・英国所在の関連会社への商標使用に係るロイヤルティ。
税務総局は、役務提供の実在性が証明されていない、ロイヤルティ支払いの書類の信頼性が低いとして、いずれも損金不算入とする更正を行った。
納税者の主張
納税者側は以下を主張した。
・両支払いについてPPh第26条源泉税を適正に控除・納付済み。
・契約書および役務提供記録が存在し、運営上の助言、商標ライセンス利用が適法である。
・支払い証拠書類も有効である。
裁判所の判断
・税務裁判所:納税者の主張を一部認容。
・最高裁(PK審):税務当局のPKを棄却し、納税者の証拠(源泉税納付書を含む)によって支出の正当性が証明されたと認定。
重要な示唆
適切な証憑書類、明確な契約書、源泉徴収義務の履行は、支払いの損金算入を正当化し、再分類リスクに対抗する上で不可欠である。
分析
これらの係争事例は、インドネシア税制においてロイヤルティ課税の範囲が形式的な契約名義や支払方法ではなく、経済的実質に基づき判断されることを示している。税務当局は源泉税収確保の観点から、支払いを広範にロイヤルティと解釈する傾向がある。一方で納税者側は、取引の実態を立証し、詳細かつ正確な証憑を整備することで、税務リスクを抑制する責任を負う。
実務対応上のポイント
・契約内容の明確化:役務提供範囲、対価算定方法を具体的に規定。
・証憑保全の徹底:契約書、業務報告書、支払い記録、源泉税納付書などを体系的に管理。
・税務監査対応ポリシーの整備:係争予防のため、社内ガバナンスを確立。
・取引実態の立証可能性の確保:書面証拠を通じた合理的説明を準備。
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