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FCG インドネシア ニュースレター(2025年5月21日)

Tuesday May 20th, 2025Indonesia

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「どこで行ったか」を書かなかった、サービス提供地の不記載が引き起こす税務否認の現実

 

日・インドネシア間をはじめとする国際取引においては、業務の透明性を確保するのみならず、現地の税務当局による調査に対する準拠性を担保する観点からも、取引に係る文書を正確かつ整合的に管理することが不可欠である。なかでも、複数の法域をまたいで提供されるサービス取引については、その分類、内容、実施場所に関する情報が精緻に記録されているか否かが、課税上の取り扱いを大きく左右することとなる。

 

有形取引と無形取引の区別について

一般的な商取引慣行において、法人間取引は大別して以下の二類型に分類される。

1.有形資産の取引      
商品や設備等の有形資産に関する取引は、通常、物理的な引渡しが完了した時点で認識される。注文書に基づき、納品書および受領確認書等の証憑をもって取引完了が証明されるのが一般的な実務である。

2.サービス提供に係る無形取引
無形取引には、利子支払、ロイヤリティ、ライセンス料等、様々な形態が存在するが、本稿ではそのうち「サービス提供」に限定して論じる。サービス提供取引は、有形物の移転とは異なり、その性質上、実施内容、範囲、場所を明示した詳細な記録が求められる。 このような取引においては、「業務進捗・履行報告書」と呼ばれる内部文書が一般的に作成され、下記の情報が網羅されていることが望ましい。
〇サービス提供者および受領者の法人名
〇提供されたサービスの具体的な内容(技術指導、業務委託、研修等)
〇投入された工数または達成した業務の節目
〇案件期間や外部リソースの利用等に関する補足情報

 

当該報告書は、サービス提供完了後の請求書発行の根拠資料として活用されることが多い。

 

 

日・インドネシア間取引における典型的なコンプライアンス上の落とし穴

当社が多数の企業支援を行うなかで見られる共通の不備の一つとして、前述の業務報告書において「サービス実施場所」が明記されていないという事例が頻発している。特に、受益者がインドネシア法人である場合、この実施場所の明示は、課税実務上きわめて重要な意味を持つ。サービスが「日本国内」で実施されたのか、「インドネシア国内」なのか、あるいは「両国間にまたがる」のかを明確に記載することが、税務調査対応の初動として不可欠である。

 

 

税務調査におけるリスク:インドネシア税務当局の視点

インドネシア共和国税務総局(Directorate General of Taxes:DGT)が実施する法人税調査においては、海外との取引一件一件が逐一検証の対象となる。業務報告書においてサービス実施場所が記載されていない場合、税務当局は以下のような不利な推定を行う可能性がある:

・サービスが実質的に「インドネシア国内」で提供されたとみなされ、かつその期間が6か月超に及んでいれば、恒久的施設(Permanent Establishment:PE)の存在を主張されるおそれ

・日本側から出向しているスタッフ(いわゆる駐在員)によってサービスが実行された場合、その人的関与をもって実質的なPEと解釈されるリスク

・サービスの履行実態が不明瞭であるとされ、裁量権で、費用計上の否認につながる可能性

このような推定は、企業側にとって重大な税務リスクを生じさせ、調査対応の複雑化、課税繰延損失、及び間接的な信用毀損につながる可能性がある。

 

 

否認リスクへの対処と防止策

企業としては、この種のリスクに対処すべく様々な反証資料を提出することができるが、これには多大な時間と人的リソースを要することを免れ得ない。一般的な対応手段としては以下が挙げられる:

1.ベネフィット・テストの提示
当該サービスが受益者側にいかなる具体的な経済的利益をもたらしたか(売上増加、業務効率化等)を証明する。

2.補足証憑の提出
〇サービス契約書または注文書(発注書)
〇サービス提供の様子を記録した写真、業務記録、現場資料
〇案件遂行に係る社内報告書や進捗管理表等

        しかしながら、上記対応を後追いで行うことは、税務調査の長期化および社内調整の煩雑化を招き、結果として企業活動全体への影響が懸念される。

         

         

        結論:明確な文書は、すなわちコンプライアンスである

        このような事態を未然に防止するため、国際的なサービス取引に携わる企業は以下のような文書管理体制を構築・徹底すべきである:

        ・業務報告書や請求書等、全ての関連文書において「サービス実施場所」を明示すること

        ・報告書には、サービスの内容、範囲、関係当事者等の基本要素を確実に記載すること

        ・サービス履行開始前の段階から関連資料を体系的に保管し、調査要請時に備えること

        これらの対策を講じることで、企業は税務リスクの最小化を図るとともに、サービス提供者および受益者双方の信頼関係を強化し、円滑な事業運営を実現することが可能となる。

         

         


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        【PDF】FCG インドネシアニュースレターNo.5