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FCG インドネシア ニュースレター(2025年5月14日)

2025年05月14日インドネシア

インドネシアの企業存続を支える、書類保存の重要性

 

インドネシアでは、制度の根幹にある明文法令のみならず、暗黙的な行政慣行および実務的要請が企業活動に深く関与する。中でも、文書保存の管理体制は、企業の法的正当性および業務継続性を支える不可欠な基盤である。財務・税務関連文書については原則として10年間の保存義務が課されるが、M&A、事業認可取得、訴訟対応等の場面では、設立初期からの法的書類の提出を求められることが常態化している。

 

法的根拠と企業の実務的対応

税務関連書類としては以下のような資料の10年間保存が求められる:

・総勘定元帳および仕訳帳

・試算表・補助簿

・請求書・領収書・送金証憑

・税務申告書および関連補足資料

また、会社法に基づき、企業は定款、株主総会議事録、取締役会決議書等の基礎法令書類を恒久的に保管する必要がある。これらは企業体としての法的整合性および取引信用力を維持するための根拠資料として機能する。

 

 

実務の現実:10年保存ルールの限界

形式上の10年ルールとは別に、企業買収・合併(M&A)における法務デューデリジェンスでは、創業時の定款や株主異動の公証証書、役員変更登記書類などの提出を求められることがあり、また外国投資審査や事業許認可申請(BKPM対応)においても、初期の事業許可証、納税者番号、ドミサイル証明、資本金払込証憑などの原本が必要とされる。これらの常備性書類を喪失した場合、各種申請や取引・再編のプロセスが停止または頓挫するリスクが生じ得る。

 

保存対象の分類と推奨保存年限

時限的保存(最低10年間)

・税務申告書および証憑書類

・財務諸表および監査報告書

・給与関連台帳

・銀行明細・請求書・会計帳簿一式

 

恒久的保存(設立時より永久)

・定款および改定履歴

・事業者登録番号(NIB)、事業許可(SIUP・TDP等)

・公証人作成の設立証書、株主変更証書

・ドミサイル証明書、土地建物証明書

・輸出入許可証、資本金払込に関する証憑類

これらの資料は、保存年限の法定明記はないが、取引先・官公庁・外部監査人から恒常的に要求され得るため、事実上の永久保存対象と解することが望ましい。

 

 

文書喪失による経済的・法務的リスク

基幹文書を適切に保存しないことにより、以下の事象が発生するおそれがある:

M&A交渉の破談:企業沿革や資本構成の正当性が証明不能となり、投資撤回に至るケース

許認可の不認可・大幅遅延:法的根拠資料の不備により、行政手続が停止される可能性

行政罰則の適用:法令遵守義務違反として行政指導または制裁措置を受けるリスク

課税根拠の不確実化:取得原価、負債性の立証が困難となり、税務上の否認・追徴対象となる

場合によっては、法人格の再認定を裁判所に申請せざるを得ない場合もある。

 

 

デジタル保存の活用とガバナンス強化の必要性

一部の税務関連文書(VAT申告書等)については、真正性可読性完全性、および長期可用性を確保することを前提に、電子保存も実務上容認されている。ただし、単なるスキャン保存では監査対応や法的証明としては不十分であり、企業としては文書管理体制の構築・運用が不可欠となる。

具体的には、バージョン管理機能を備えた文書管理システムの導入、公証書・許認可原本の高解像度スキャンによるPDF台帳化、クラウドと社内サーバーによる二重バックアップ体制の確保、さらに文書種別ごとに保存年限を定めたマトリクスの整備と期日管理の徹底が求められる。

 

 

結語:文書保存は経営資産の一部である

インドネシアにおける書類保存は、単なるコンプライアンス対応ではなく、企業の存続性資本取引の信頼性を確保する経営インフラである。実務指針としては、財務・税務関連書類は10年間、企業法務に関する基礎文書は永久保存とすることが望ましい。書類一枚の有無が、数十億円規模の投資判断を左右する現実を踏まえ、企業内の全関連部門において、統合的かつ戦略的な文書管理の再構築を進めることが急務である。

 

 


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【PDF】FCG インドネシアニュースレター_2020514