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FCG インドネシア ニュースレター(No42)インドネシアの規制動向:国際規制との整合とハラル規制の強化

2026年03月06日インドネシア

外国企業・製造業者への影響と実務上のポイント  

 

近時、インドネシアの規制環境をめぐる動向は、構造的な観点から整理する必要が生じている。表面的にはインドネシア・米国間の相互関税協定(ART)に注目が集まっているものの、その本質はより広範な政策方向性に関わるものである。すなわち、国際的な規制との整合を模索する動きと、国内ハラル制度の執行強化が並行して進められている点にある。日本本社および投資家にとって、本件は単なる二国間の政治的動向として捉えるものではなく、むしろ、インドネシアの規制政策の方向性を示す事例として理解することが重要である。

 

 

規制円滑化の兆候:FDA承認の位置付け

ARTの枠組みにおいて、インドネシア政府は、特定分野における市場参入審査の補助資料として、米国食品医薬品局(FDA)の承認および査察結果等を一定程度参照する可能性を示唆している。特に医薬品および医療機器分野において、技術的審査の効率化につながる可能性が指摘されている。仮に今後、技術ガイドライン等により制度化された場合には、審査の重複の解消や市場投入までの期間短縮につながる可能性がある。

もっとも、以下の点については明確に区別して理解する必要がある。

・第一に、FDA承認の参照は主として安全性・有効性に関する技術的審査手続の合理化に関するものである。

・第二に、これはインドネシアのハラル製品保証法(2014年法律第33号)に基づくハラル義務を自動的に免除するものではない

インドネシア政府当局は、公的説明において「義務的ハラル(wajib halal)に該当する製品は引き続きハラル認証を要する」との立場を明確にしている。したがって、具体的な実施規則が公表されるまでの間、企業としては既存のハラル義務が引き続き適用されることを前提に対応するのが実務的に妥当である。

日本企業にとっての本質的な論点は、「本措置が米国企業に有利か否か」ではない。
むしろ、「インドネシアが将来的に規制当局間の相互依拠(regulatory reliance)モデルへ移行する可能性があるか」という点である。もしFDAに基づく審査簡素化が制度として定着すれば、将来的には他の規制制度との関係においても類似の議論が生じる可能性がある。

 

 

回状第2号(2026年):グレー領域製品に対する資料要件の強化

これと並行して、ハラル製品保証実施機関(BPJPH)は2026年回状第2号(2026年2月20日施行)を発出し、既存のハラル分類に明確に該当しない製品について、提出資料の要件を強化した。

具体的には、以下のいずれにも明確に該当しない製品が対象となる。

・義務的ハラル製品カテゴリー

・ハラル認証の対象外とされる原材料リスト

当該製品について外国ハラル証明書(SHLN)の登録を行う場合、輸入者には以下の資料提出が求められる。

・製品分類および製造工程に関する詳細説明

・MSDS(安全データシート)およびCOA(分析証明書)等の技術資料

本措置はハラル制度の対象範囲を拡張するものではない。すなわち、証拠資料に基づく分類確認を強化するための行政運用の厳格化と理解される。実務的には、従来よりも製品分類に関する行政審査が詳細化し、企業による自己判断による分類だけでは十分とされず、技術的根拠資料の提示が重視される傾向が強まると考えられる。

 

 

制度構造:国際規制との整合と国内規制強化の並行

インドネシアの政策動向は、以下の二つの方向性が同時に進行している点に特徴がある。

・国際的な規制との整合を図る対外的な制度調整

・ハラル制度を中心とした国内規制の統制強化

この構造は、日本企業の本社にとって次の三点の意味を持つ。

第一に、競争環境への影響である。
FDAに基づく審査簡素化が実務的に機能した場合、医療機器やライフサイエンス分野において、米国企業が市場参入速度の面で優位性を得る可能性がある。

第二に、コンプライアンス体制の重要性である。
ハラル制度は依然として法令上の義務であり、製品分類の誤認や提出資料の不足は輸入手続の遅延につながる可能性がある。

第三に、社会的感応度の高さである。
ハラルに関する議論は社会的関心が高く、制度上の義務が変更されていない場合であっても、世論の動向が企業活動に影響を及ぼす可能性がある。

 

 

日本企業への示唆

以上を踏まえると、本件をハラル規制の緩和として理解するのは適切ではない。

むしろ、インドネシアは国際規制との整合性を模索しつつ、宗教規制に関する主権を維持する制度運営を試みていると評価できる。

インドネシア市場で事業展開を行う日本企業にとっては、

・国際的な規制承認(FDA、PMDA、EU規制等)が今後の制度対話において一定の意味を持ち得る一方、

・ハラル制度は依然として市場参入の重要な制度的要件であり、

・特に分類が曖昧な製品については提出資料の整備が一層重要となる。

すなわち、国際的な承認の活用と国内制度への適合を両立させることが、インドネシア市場における事業運営の前提条件となるのである。

 

 


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