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2025年11月07日インドネシア
インドネシア商業省令第37号(2025年)による輸入政策制度の改正について
インドネシア共和国商業省は、2025年10月に商業省令2025年 第37号(Permendag 37/2025)を公布し、商業省令2025年 第16号「輸入に関する政策及び規制」を改正した。本改正は、輸入者登録番号制度(API制度)の運用上の不整合を是正し、「貿易法(2014年第7号法)」及び「職創出法(2023年第6号法)」に基づく国家的投資政策との整合性を図ることを目的としている。
また、本改正は、オンライン・シングル・サブミッション(OSS)制度の下での電子行政強化を進めつつ、輸入活動を実質的な投資・生産活動に限定し、投機的輸入を抑制する政策意図を明確に示している。
輸入者識別番号(API)の抹消制度の新設
今回の改正により、API(輸入者識別番号)に関する抹消制度が新設された。従来の商業省令2025年 第16号では、一般輸入者(API-U)から生産者輸入者(API-P)への変更のみが規定されており、登録の抹消(廃止)に関する明確な手続規定は存在しなかった。
(1)抹消事由の明確化
新設された第8A条では、NIB(事業者識別番号)をAPIとして用いる登録に対し、以下の事由に該当する場合に抹消を行うことができると定めている。
1.輸入関連の事業許可、輸入承認書(Surat Keterangan)、又はサーベイヤー報告書(Laporan Surveyor)の有効期間が満了している場合。
2.有効な許可等を保有しているが、輸入の実行が行われていない場合。
また、APIの抹消は一度限りとされている。
(2)電子的申告義務
輸入者が抹消を申請する場合、OSSシステム上で電子申告を行い、以下の事項を含む申立書を提出する必要がある。
・抹消理由の記載
・未実施の輸入案件が存在しない旨の確認
・(API-Pの場合)既輸入品を譲渡・販売しない旨の誓約
(3)抹消後の取扱いの違い
・API-P(生産者輸入者)による輸入品は、抹消前後を問わず、譲渡または転売が禁止される。
・一方、API-U(一般輸入者)による輸入品は、抹消前に限り、譲渡または販売が認められる。
この区分は、生産用輸入特典の不正転用(販売目的輸入)を防止するための措置である。
投資目的輸入に関する取扱いの改正
次に、改正のもう一つの重要点は、投資目的の輸入(Master List制度関連)に関する取扱いの変更である。
Master Listとは、財務大臣規則2009年 第176号及び同第188号(2015年改正)に基づき、機械設備等の輸入に対して関税を免除する制度を指す。
(1)従来制度の概要
旧商業省令2025年 第16号、第46条及び附属書I-Bでは、投資目的輸入に対して広範な免除が認められていた。すなわち、新規・中古を問わず、規制対象品目(Lartas)にも適用される特例が存在した。
しかし、「貿易法」第54条は「国家利益のため、政府は輸入を制限できる」と規定しており、過度な免除措置は政策整合性を欠くものとなっていた。
(2)改正後の制度
改正後、附属書I-Bは全面削除された。Master List保有者又はその指定代理業者は、引き続き投資目的輸入を実施できるが、輸入制限規定(Lartas)の遵守義務が新たに課される。
(3)主な改正点
1.Master List対象輸入者は、以下の義務から引き続き免除される。
□輸入業許可(IT/IP又はPI)
□技術検証又は追跡(Verifikasi/Penelusuran Teknis)
□指定港湾の制限
2.対象物品が規制品目に該当する場合、輸入制限(Lartas)を遵守する義務が課される。
3.中古品の投資目的輸入は、自由輸入品・規制品を問わず、原則禁止となった。ただし、Master List上で耐用年数制限のない資本財として明記されている場合のみ例外が認められる。
この改正により、行政上の便宜供与から産業保護政策への転換が明確化され、輸入投資が国内産業基盤強化に資する方向へ再構築された。
経過措置及び施行期日
改正省令2025年 第37号は、2025年11月5日より施行されるが、以下の経過措置が適用される。
旧第16号省令による免除措置は、
・2025年11月5日以前に船積みされた貨物(B/L又はAWB日付で確認)で、
・2026年2月3日までに目的港へ到着したもの(税関書類1で証明)に限り有効とされる。
これにより、既に輸送中の案件については事後の不利益が生じないよう配慮されている。
対象となる関連省令
本改正は、以下の個別品目規制省令に直接的な影響を及ぼす。
・商業省令第17号(2025年)繊維・繊維製品(特にバティック及び衣料品)
・商業省令第18号(2025年)及び第31号(2025年) 農産・畜産品
・商業省令第19号(2025年)及び第38号(2025年) 塩類・水産品
・商業省令第20号(2025年)及び第32号(2025年) 化学品・危険物・鉱産物
・商業省令第21号(2025年)電子・テレマティクス機器(冷却装置、多機能複合機等)
・商業省令第24号(2025年)中古品及び非有害廃棄物輸入
これらの品目については、投資目的輸入が免除対象から除外され、輸入制限遵守義務の下で管理されることとなる。
企業への影響
(1)コンプライアンス上の留意点
企業は、自社のAPI種別及び投資輸入計画を再点検する必要がある。
・API-UとAPI-Pの用途区分を正確に管理すること。
・OSS及びINATRADE/SINSWシステム連携下での電子申請を遵守すること。
・Master Listの内容とLartas要件の整合性を確認すること。
(2)行政運用上の影響
抹消制度の導入により、行政側は電子的トレーサビリティを確立し、不正利用の防止を徹底することが可能となった。違反者はAPI資格を喪失し、以降の輸入活動に対して自動的な制限が課される。
(3)政策的意義
今回の改正は、貿易・産業・投資政策を統合的に運用するための施策であり、従来の省庁間の断絶を是正する試みである。企業にとっては審査環境の厳格化が進む一方で、電子行政による透明性と一貫性の向上が期待される。
まとめ
商業省令第37号(2025年)は、インドネシアにおける輸入管理制度を構造的に強化するものである。API抹消制度の法定化及び投資目的輸入の免除削除により、商業省は国家貿易収支及び産業政策の整合化を一層推進する姿勢を明確にした。本改正は、「自由化」から「選択的管理」への政策転換を象徴しており、今後の輸入関連事業は、国内付加価値創出に資する実質的投資活動として再定義されることになる。
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